日替わりサンドイッチ

雑多な覚え書きと日常

ナショナル・シアター・ライブ2023『レオポルトシュタット』感想

日本版を観たことがないため完全に初見です。

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登場人物が多く、ユダヤ関係で聞きなれない単語があったりで、関係性を整理したり勉強したりして改めてまた観たいなという気持ちもありますが、最後まで見て伝わってくるものはとてもシンプルかつ強烈だと感じました。

休憩なし約2時間半を膨大な登場人物と台詞で紡がれるわけですが、ジョークも交えつつテンポの良い会話劇の中で、彼らの日常が生々しく浮かび上がります。

 

そこにはさまざまな生き方をする彼らの社会の中でのユダヤ人としての在り方がはっきりと描写され、その特殊性が伝わると共に、家族、親戚で集まり、談笑したり、議論したり、ちょっとしたいざこざがあったりする様子を見ていると、徐々に彼らに近しさや愛しさを感じてきます。

 

特殊な状況下で悲劇的な運命を辿るある家族たちの様子が生き生きと実態を持って迫ってくる。

そして、単に遠い国の遠い時代の話として片付けられないものとなる...(ちょっと前まで普通に生きてた人達がじわじわと、あるいは突然に日常を奪われ、逃げられる人やそうでない人、生き延びる人とそうでない人に分断されるの全然今でもあるな...というのもあって)


その積み重ねの末にあるラストシーンの喪失感と深い痛みが、この歴史的な悲劇を鮮明に生きさせ、忘れ難いものとなる。

 

抜けない杭のようなものと、在りし日の灯火が脳裏に焼き付けられる、そんな作品でした。

 

俳優陣の演技が素晴らしくて、それがまたリアリティをもって彼らの日常や悲劇を生きたものにしていたのですが、子役の子の怯える演技が上手すぎてトラウマになりそう(無垢な子供が残虐な目に遭うのは特に堪える)